研究概要 |
培養角膜実質細胞をコラーゲンゲル内に包埋しヒト血小板由来のSPARC (Secreted Protein Which Is Acidic And Rich In Cysteine)を添加して培養すると、添加したSPARCの濃度に依存して角膜実質細胞によるコラーゲン収縮が促進した。また、プラスチック培養皿上に培養した角膜実質細胞の培養液中にSPARCを添加すると細胞の収縮が生じることを観察した。SPARCを添加して培養するとα-smooth muscle actin(αSMA)を発現する角膜実質細胞の割合は対照群に比較して有為に増加した。さらに細胞100,000個当たりのαSMA発現量もSPARC添加培養によって増加していることが認められた。 家兎角膜でのSPARCの局在について免疫組織学的に検討した。正常家兎角膜では内皮細胞層にのみに認められたが、創傷角膜では損傷部の上皮細胞や角膜実質部に出現することが観察された。SPARCの角膜実質細胞によるコラーゲンゲル収縮に対する促進作用はTransforming growth factorβ(TGFβ)に対する抗体によって阻害された。TGFβも実質細胞によるコラーゲンゲル収縮を促進し、この作用はLatency Associated Peptide(LAP)によって阻害された。一方、SPARCにはLAPによるTGFβに対する抑制作用に拮抗し、培養上清中ではSPARCとLAPが結合して存在していることが認められた。これらの結果はSPARCが角膜創傷治癒に重要な役割を演じていることを示唆し、その機序にはTGFβとの相互作用が関与している可能性が示唆された。
|