研究概要 |
本年度は、主に直腸肛門領域の発生を、突然変異系生物(mutant)及び催奇形誘発剤(etretinate,adriamycin 等)を用いて病態を発生させた上で検討した。その結果、消化管の発生が末梢神経系のみならず脊髄系(脳神経系〜仙尾骨レベル)の広い範囲と密接に呼応しながら進行し、Hirschsprung病や直腸肛門奇形の発生過程と相関関係をもつことを明らかにした。さらに、消化管の発生を全身の個体発生のなかで位置付けて捉えることの重要性の認識から、全身発生を検討し、食道閉鎖症や腸管重複症など複数の小児外科疾患が共通の遺伝子学的欠損の影響を受けて発生することを明らかにした。続いて、複数の体軸・体節決定遺伝子や前癌遺伝子(proto-oncogene)群が先天性疾患の原因遺伝子である可能性が高くなり、申請者らのそれまでの実験結果に基づく推察が実態をもって検証しうる途が開けてきた。これらの研究経過にもとづいて次年度において、小児外科疾患における体軸・体節決定遺伝子群の関わりを胎生学的に検索する必要があると考えるに至った。
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