研究概要 |
1.ヤギ胎仔に対する内視鏡手術 先天性横隔膜ヘルニア胎児(CDH)を対象として子宮内において低侵襲下に気管結紮を行うための基礎的検討を行った。子宮切開による胎児気管の結紮はすべて術後48時間以内に流産となった(n=3)。子宮内CO_2送気による内視鏡的気管クリッピングを6匹の胎仔に施行した。胎仔の頭部の固定と頚部の伸展によるポジショニングが最も重要な因子であるが、全例73時間以内に流産により失われた。気管結紮により胎仔肺は48時間で約2倍の湿重量に拡張した一方でクリップによる気管損傷例では肺胞壁は厚くより未熟な段階に留まった。超音波エコーガイドによる胎児器官の穿刺による気管の閉塞は最長144時間の胎仔生存を見たが、気管閉塞の効果は不確実であった。現在超音波ガイドによる経口的気管内マイクロバルーン挿入を行いその効果と侵襲につき検討中である。これまでの研究を通じて胎仔に対する内視鏡手術は必ずしも低侵襲とは言えず、術後の子宮収縮の予防とともに低侵襲なアプローチと手技の開発が必要と考えられた。 2.横隔膜ヘルニアモデル動物の作製と成長因子の発現に関する検討 妊娠9.5日のSDラットにnitrofen100mgを投与し胎生20日に45胎仔中31にCDHが認められた。電顕による観察では患側肺には胎生20日の時点でII型上皮細胞とグリコーゲン顆粒が多く認められ、1型細胞への移行が遅れた未熟な状態にあるものと考えられた。低形成肺におけるSP-C,KGFおよびKGFRのmRNAの発現を胎生20日においてRT-PCRにより検討したところ、対象例との間にSP-CおよびKGFRに関しては差が認められなかったが、KGFの発現はCDH群で低下していた。この成績はその後の数回の検討にて再現性に問題が見られたため、現在northern blottingによる検討を行っている。
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