ET受容体の検討 近年、ヒルシュスプルング病の病因に関して研究が進み、エンドセリンB(ETB)受容体遺伝子を欠損させたノックアウトマウスにおいて全結腸型の無神経節腸管を発症することが報告され、ヒトにおいてもエンドセリン受容体遺伝子に異常を持つ症例が報告されている。 ヒトヒルシュスプルング病腸管において放射性リガンドを用いた受容体結合実験を施行し、ET受容体の局在および結合能について検討した。ETA受容体およびETB受容体の放射性リガンドとして[^<125>I]BQ123と[^<125>I]IRL1620を用いた。対照正常腸管では筋間および粘膜下の神経叢に一致してETB受容体リガンドの集積を認め、ETA受容体リガンドの集積は粘膜固有層に軽度認められた。ヒルシュスプルング病腸管の正常神経節部ではETA受容体、ETB受容体ともに正常対照腸管と同様の部位に同程度のリガンドの集積を見た。ヒルシュスプルング病腸管の無神経節部では外来神経線維束に沿ってETB受容体への強い集積が確認されたが、筋間および粘膜下への集積は認めなかった。また、正常対照腸管、ヒルシュスプルング病神経節部腸管では神経線維への強い集積は認めなかった。ETA受容体リガンドは正常対照腸管と同様、粘膜に集積を認めるのみであった。 今回の検討ではETA、ETB両受容体の局在・結合能に異常を来した症例は認めなかった。今後、症例を重ねるとともに、ET関連遺伝子の検討も必要と思われる。また、無神経節腸管における外来神経線維束にETB受容体が局在することを証明したことは同線維束の機能を検討する上でひとつの成果と考える。
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