研究概要 |
ヒト歯肉上皮細胞は黒色色素産生菌(BPB)の菌体刺激により炎症性サイトカインを分泌したり細胞表面抗原の発現を誘導することから、炎症反応や免疫応答に積極的に関与している可能性が示唆されている。本研究ではこの機構を詳細に解明するために、様々な菌体成分刺激に対するヒト歯肉上皮細胞の反応をフローサイトメトリー、ELISA法、RT-PCR法等の方法により調べ、これまで以下のような成績を得た。 1.健常人歯肉より分離培養したヒト歯肉上皮細胞はインターフェロン-γ刺激により、接着分子(CD54,ICAM-1)、Fas抗原(CD95),MHCクラスII抗原(HLA-DR)の発現を誘導した。インターロイキン(IL)-1 αも弱いながらICAM-1,Fas抗原発現誘導作用を示した。 2.BPBの菌体成分であるPorphyromonas gingivalis線毛や、Prevotella intermedia糖タンパク質、また各種グラム陽性菌菌体表層成分リポタイコ酸は、IL-1 αと同程度ないしやや強いICAM-1とFas抗原発現誘導作用を示し、また、コロニー刺激因子やIL-8等のサイトカイン産生を誘導した。 3.精製BPB LPSは、いずれも歯肉上皮細胞のICAM-1,Fas抗原ならびにHLA-DRの発現を誘導しなかった。 以上の成績は、口腔細菌の菌体成分刺激を受けた歯肉上皮細胞が炎症反応の拡大に関与していることを示唆している。また、ヒト歯肉線維芽細胞はLPSレセプターとされるCD14の発現に関して多様性をもち、CD14高発現とCD14低発現のグループに分けられること、CD14高発現歯肉線維芽細胞はLPSに応答して炎症性サイトカインを産生することを明らかにした。今後、BPBの菌体表層成分を巡って、歯肉上皮細胞、歯肉線維芽細胞と免疫担当細胞の相互作用について研究を行っていく計画である。
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