本研究計画は、胎生期及び成長期のラットの軟骨と骨を研究対象とし、細胞外基質タンパクの軟骨細胞及び骨芽細胞の分化に与える影響について検討することを目的とした。軟骨の分化については、特に細胞の肥大化と基質の石灰化の過程におけるX型コラーゲンの動態を気管軟骨と脛骨の成長板軟骨との間で免疫組織学的に比較検討した。また骨については、胎生期の下顎で間葉細胞が集合し骨芽細胞へ分化する過程における細胞外基質タンパクの発現を免疫組織学的に検討した。 出生直後から10週齢のWistar系ラットの気管軟骨と出生直後の脛骨の成長板軟骨を固定後パラフィンに包埋して、切片にX型コラーゲンに対する免疫染色を施した。また、胎生12〜19日齢のWistar系ラット胎児の頭部を固定後パラフィンに包埋し、連続切片に細胞外基質タンパクに対する免疫染色を施した。 脛骨の成長板軟骨では、軟骨細胞の肥大化と軟骨基質の石灰化に伴い細胞周囲の基質にX型コラーゲンが発現したが、気管軟骨ではX型コラーゲンは認められなかった。また、胎生14日齢の胎児においては、将来の骨形成部位に相当する間葉細胞集合領域にテネイシンとフィブロネクチンが局在していた。胎生15日齢においては骨の未熟な基質が見られ、基質中にはI型コラーゲンとオステオネクチンの発現が認められた。また、胎生16日齢では骨基質が石灰化を示し、オステオポンチン、骨シアロタンパク質及びオステオカルシンの発現が認められた。 脛骨の成長板軟骨とは異なり、気管軟骨における細胞の肥大化と基質の石灰化にはX型コラーゲンが関与しないことが示唆された。また、骨芽細胞の発生と分化に伴い、細胞外では時期特異的に特徴的な基質タンパクが発現され集積されることが示された。
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