マウス胎仔下顎頭軟骨の初期軟骨内骨化は破骨細胞のruffled borderによるbone collarの吸収によって開始するが、そのような破骨細胞が軟骨基質中の石灰化球や細胞残渣を突起や空胞によって取り囲んでいる状態が観察された。したがってこの部位においては破骨細胞がbone collarの吸収に引き続き、ruffled borderではなく主に突起と空胞を利用することによって、軟骨基質や細胞残渣の吸収にも関与している可能性が示唆された。その際破骨細胞の細胞表面にヒアルロン酸レセプターであるCD44が検出されたことから破骨細胞の軟骨基質内への侵入には軟骨基質中のヒアルロン酸との相互作用があるものと推察された。またtube形成をした毛細血管内皮細胞が分解した軟骨基質や少量の細胞残渣を取り囲む状態も観察され、さらに破骨細胞と接触するような肥大軟骨細胞が小型の石灰化基質を取り囲む状態も認められ、これらの細胞もおそらく取り囲んだ物質の処理に関与しているものと考えられた。さらに、従来より単核の前破骨細胞の癒合過程には骨芽細胞あるいはストローマ細胞との直接接触が必須であると考えられているが、今回の所見では毛細血管内皮細胞に未分化な単核の細胞が密着している状態も認められた。したがって場合によっては骨芽細胞やストローマ細胞の代わりに内皮細胞が前破骨細胞の癒合に関係していると考えられる。以上のことからマウス下顎頭軟骨の初期軟骨内骨化部位においては破骨細胞、肥大軟骨細胞、毛細血管内皮細胞が従来知られている機能以外の機能を発現していると考えられ、またそれらの細胞が密に接着していることから様々な細胞間の相互作用も考えられた。 また本研究費を用いてマウス下顎頭軟骨の初期発生過程やラット破髄における免疫組織化学に関する研究も行い、これらの結果は論文にまとめて報告した。
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