研究概要 |
軟骨細胞の増殖・分化調節に関わるBMPおよびそのレセプターの同定と、それらの分子の生理作用を解明する目的で、以下の研究を行った。 (1) 昨年に引き続きBMPR-IAおよびIB、BMPR-II、ActivinR-IIAのdominantnegativeBMPレセプター(それぞれDN-IA、DN-IB、DN-II、DN-ActR-IIと略す)をニワトリ軟骨細胞に導入して軟骨細胞の機能に及ぼす影響を調べた。DN-IAは、軟骨細胞の分化形質に著明な影響を与えなかったが、DN-IB.DN-II、DN-ActR-IIは、軟骨細胞の増殖を強力に促進する一方で、分化を抑制した。dominant negative BMPレセプターによる軟骨細胞の分化抑制作用と増殖促進作用の強さは密接に連動しており、もっとも著明な分化抑制作用を示したDN-IIは、同時に最も著明に軟骨細胞増殖を促進した。 (2) 昨年度の研究で、BMP-2,4遺伝子を導入して過剰発現させた軟骨細胞では、増殖率の低下と、分化の亢進が認められた。この結果を確認するためにBMPR-IAおよびIBのconstitutive active BMPレセプター(それぞれCA-IA、CA-IBと略す)をレトウィルスベクターに組み込み、軟骨細胞に導入した。その結果、両者とも軟骨細胞の増殖を抑制し、分化を促進した。また、CA-IAはそれらの作用に加えて、軟骨細胞の石灰化誘導とapoptosisも強力に促進した。 以上の結果より、BMPR-IBおよびBMPR-IIを介したBMP signalは、軟骨細胞の増殖・分化・石灰化・apoptosisのあらゆる機能変化に必須であることが強く示唆された。
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