研究概要 |
前回はラット下位脳幹部の一酸化窒素合成酵素(NOS)発現ニューロンの胎生期から成熟期にいたるまでの個体発生をNADPH-diaphoraseの酵素組織化学を用いて明らかにした。そこでは、脳の他の部位に先がけて胎生期15日目に三叉神経吻側亜核の背内側部(Vodm)、吻外側孤束核(Sn)に陽性ニューロンが出現した。傍三叉神経核および尾側亜核(Vc)の表層部での出現はそれに遅れて出産後10日目に出現した。今回は前脳・中脳でのNADPH-diaphoraseの個体発生を観察し、脳全体のNADPH-diaphoraseの個体発生のマッピングを完成した。NOSの活性の発達過程は神経発生やシナプス発生の時期と平行し、ニューロンの活動と関係することを示唆した。さらにHRPの越神経節輸送を利用した下顎神経の種々の末梢枝の中枢投射部位とN○S発現ニューロンを二重標識し、NOS発現ニューロンは舌の体性感覚を伝える舌神経の投射領域に多く分布することを示した。口腔顔面領域を支配する末梢神経の切断や口腔顔面領域の炎症性刺激に対してVcのNOS発現ニューロンは活性が両側性に上昇しやすく、Vodm,Snでは舌神経切断に対して、活性が下降した。一酸化窒素が三叉神経系で特に口腔内の感覚発現や運動反射の調節に関与することが明らかになった。さらにVcとVodm,SnではNADPH-diaphoraseの活性が越シナプス性に末梢からの入力の性質により異なって制御され、果たす役割が異なることが明らかになった。
|