骨組織に存在するリン酸化タンパク、特にオステオポンチン(OPN)に着目してオステオポンチンと石灰化の関連性を生化学的ならびに組織学的に調べること目的とした。前年度に得られた所見をもとに、骨基質石灰化過程におけるOPNの局在を免疫組織化学的に調べた。骨髄骨のミネラル相から可溶化される60KD付近のタンパクがアミノ酸組成からOPNと考えられるので、N末端から13残基のペプチドを合成し、ポリクロナール抗体を作製した(s-A)。また、このタンパクを精製して全タンパクを抗原としたポリクロナール抗体も作製した(w-A)。w-A抗体を用いて光顕免疫組織化学を行って観察すると、骨髄骨基質全体が陽性反応を呈した。また、骨形成過程を調べると、石灰化領域に類似した部位が陽性反応を呈した。骨構成細胞を観察すると、破骨細胞、骨芽細胞、骨細胞共に陽性であった。特に、骨形成の活発な時期の骨芽細胞は強陽性を呈した。 一方、皮質骨基質は陰性であった。s-Aは抗体価が低く免疫組織化学に応用出来なかった。w-A抗体の特異性をウェスタンブロットを行って調べた結果、OPN以外のタンパクと考えられるバンドにもわずかに反応がみられた。以上の結果を総合すると、一般にOPNの機能は単一ではないと考えれており、骨組織においては石灰化との関連性はむしろ低いと考えられている。しかしながら、今回用いたW-A抗体は厳密には特異性に乏しい点があるものの、光顕レベルでの免疫組織化学的観察、Stains-all染色およびvon Kossa染色による組織学的観察結果から、骨髄骨基質は皮質骨に比較して多量のOPNを基質中に含み、石灰化に関連して蓄積することが強く示唆された。今後は特異性の高い抗体を作製し、OPNの局在を電顕免疫組織化学的に検索し、骨組織形成、特に石灰化とOPNの関連を微細構造学的に検索する必要があるものと考える。
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