研究概要 |
Streptococcus milleri group臨床分離に関してその菌体表面上のCD15s(sLe^x)抗原の存在をモノクロナール抗体SNF-3を用いて検索した結果,多くの株の表面に発現していることが明らかとなった。 この抗原の構造を解析するために,菌体表面より莢膜様構造を単離し,モノクローナル抗体を固定化したカラムにより,精製を試みた。完全に単一にまでの精製は行えなかったが,その構成等を分析した結果,CD15sを構成する糖の一部が検出されたため,CD15s抗原の存在する可能性が示唆された。今後さらに詳細に検討を行う予定である。 Streptococcus milleri groupと同様に口腔にも存在するレンサ球菌Streptococcus pyogenesの菌体表面にもCD15sが存在しているが,それに対する最少発育阻止濃度以下の抗生物質の影響を検討した。使用した薬剤の中で,ベンジルペニシリンおよびホスホマイシンにより抗原の発現が減少することが明らかとなった。特にホスホマイシンに関しては、まったく抗菌力ない鏡像体でもCD15s発現を抑制した。この結果は,ホスホマイシンの主たる作用機序以外の作用により,抗原の生成あるいは発現が阻害していることを示唆している。また、CD15sがレンサ球菌の病原性に何らかの働きをしている可能性は高く,ホスホマイシン鏡像体は, 他の菌に影響を与えることなく、CD15sによる病原性を抑制する事ができると考えられる。
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