研究概要 |
Streptococcus anginosus groupはその表面にCD15s様抗原を発現しているが,このようにヒト類似抗原を発現した微生物により,自己免疫反応が惹起されることはHelicobacter pyloriおよびSchistosoma mansoniiなどで示されている。そこでS.intermediusのCD15s様抗原がこの菌の病原性にどの様に関わっているかを明らかにするため,マウス歯肉よりS.intermedius死菌体を持続的に接種し,各臓器への影響を検討した。 その結果,S.intermedius死菌体の持続接種により自己抗原であるCD15sに対する抗体価が上昇した。また,下顎の菌液接種部位において炎症性細胞浸潤を伴う膿瘍形成が認められ,肝臓には臓器特異的な炎症反応が惹起された。脾臓においては,CD15s陽性の多核巨細胞が多数出現し,その周囲にCD15s陽性リンパ球が観察された。肝臓に浸潤しているT細胞はそのほとんどがCD8陽性細胞であり,CD4陽性細胞は少数であった。また,B細胞の浸潤も多数観察された。頚部リンパ節ではT細胞のCD15s陽性細胞が増加し,B細胞ではCD15sの発現が減少していた。脾臓においてはB細胞にCD15s発現の増強が認められた。以上の結果は,肝臓に多数浸潤していたCD8陽性T細胞が,CD15s結合・認識能力の高い少数のCD4陽性T細胞に調節され,CD15sを発現している肝細胞の障害に関わっている可能性を示唆するものである。従って,CD15s様抗原を有するS.intermediusによる口腔内の慢性感染症の存在は,肝臓に対しての自己免疫反応を惹起する可能性が示された。
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