研究概要 |
ラット骨髄細胞を用いた破骨細胞形成系に於て、既に筆者らの得ている破骨細胞特異的モノクローナル抗体Katlに陽性の単核細胞が観察された。これらの単核細胞どうしあるいは単核細胞と多核細胞が特異的に接着している状態が観察された。これらの単核細胞が前破骨細胞であることは、カルシトニンレセプターを発現しており融合して破骨細胞様細胞になることにより確認された。FACSを用いた解析によりKatl陽性単核細胞が、接着因子であるLFA-1とICAM1を発現することが明らかとなり、これらの分子が前駆細胞どうしの融合過程に関与することが強く示唆された。しかしながらこれらの接着因子を発現する細胞は前駆細胞中の30%程度であり、他の細胞はこれらの接着分子とは異なる分子を用いて認識・融合するものと考えられた。前駆細胞どうしの特異的融合過程に関与する新しい分子を検索する為には、前破骨細胞の性質を保持した細胞株を使用するのが賢明である。しかしながら前破骨細胞の特性を有する信頼度の高い細胞株の樹立には誰も成功していないのが現状である。我々はマクロファージ分化に於て決定的な役割を果すZnフィンガー型転写因子Egr-1を発現阻止することにより、逆に破骨細胞分化が誘導されるという知見を得、既に報告している(Endocrinology 138:4384,4389,1997)ので、白血病細胞株にEgr1のアンチセンスRNAが発現するようにデザインされたコンストラクトを導入した新しいクローンを得ることにより、前破骨細胞の特性を有する細胞株の作成を現在試みている。破骨細胞分化に関与する他の転写因子についても上記白血病細胞に強制的に過剰発現させることにより、前駆細胞の特性を有する細胞株の作出を行っている。Kat1陽性の前破骨細胞株が得られると、前破骨細胞どうしの特異的認識・融合に関与する分子群が同定されるとともに、Kat1抗原そのものの解析も進み、破骨細胞分化の分子機構が解明できるものと思われる。
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