研究概要 |
破骨細胞分化に於けるひとつの重要なステップである前駆細胞間融合機構を解明する為には、前破骨細胞に特異的なマーカーが必要である。筆者が見出した破骨細胞特異的膜表面抗原(kafl抗原)は破骨細胞形成系に於いて単核の細胞も発現していた。このkafl抗原陽性単核細胞が前破骨細胞であることを、種々の形態学的手法を用いて証明し、その結果を第39回歯科基礎医学会に於て報告した。このkafl抗原をマーカーとしてFACSによる前破骨細胞膜表面抗原解析を行なったところ、細胞接着因子として有名なICAM1とLFA1が前破骨細胞膜表面に発現されていることが明らかになった(Endocrinology 139:3967-3975,1988)。ICAM1とLFA1が前駆細胞どうしの融合過程に於て重要な役割を演じていることを強く示唆する結果も得られた。ところで、HIVウイルスはCO_4陽性細胞に結合しウイルスの外膜が標的細胞の細胞膜と融合することによって感染が成立する。この融合過程にケモカインレセプターが必須であることが知られている。筆者らはケモカインのひとつであるMIP-1αの骨組織に於ける発現に関する分子形態学的研究を行なう過程に於いて、前破骨細胞どうしの融合過程にもケモカインレセプターが作用することを示唆する知見を得、報告した(Lab.Invest.76:399-406,1997)。 融合機構の詳細を解析する為には、前破骨細胞のみから成る細胞培養系を得ることが不可欠であり、その為に免疫磁気ビーズシステム(MACS)を用いて100%に純化(前破骨細胞を)することや前駆細胞の性質を有する細胞株を得ること等が重要である。前者については、100%の純化には成功していないもののかなり高度に純化することができそうである。後者に関しては、前破骨細胞株作成の為のコンストラクト(遺伝子)の構築には既に成功しており、現在、前駆骨細胞クローンを作出している段階である。各クローンの解析により、前破骨細胞間融合機構の解明が推進されるものと思われる。
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