研究概要 |
我々はアポトーシスを含む骨芽細胞の分化と蛋白質脱リン酸化に注目し、蛋白質脱リン酸化酵素の特異的阻害剤であるオカダ酸(OA)とカリクリンA(CA)を用いて蛋白質脱リン酸化と骨芽細胞の分化とアポトーシスに関して一連研究を行なってきた。in vitroで骨芽細胞様性質を有するヒト骨肉腫由来の細胞(MG63、Saos-2)をOAとCAの存在下で培養し、OAとCAは濃度、時間依存的にこれらの細胞に毒性を示し、その至適濃度はOAが10nM、CAが2nMであることを見いだした。さらにこの細胞毒性は染色体の断片化とDNAラダー形成を伴っており、典型的なアポトーシス像を示した。蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤の骨芽細胞に対するアポトーシス誘導は世界で初めての事であり、その成果の一部はすでに印刷公表されている(Morimoto et al,1997)。これらの細胞内に蛋白質脱リン酸化酵素の触媒サブユニットが特異的に発現されていることも骨芽細胞のアポトーシスに蛋白質脱リン酸化が関与していることを示唆する(Haneji et al、submitted)。さらにMG63細胞におけるOAによるアポトーシス誘導はサイクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ピューロマイシン等の蛋白合成阻害剤により回避されるがSaos-2細胞ではアポトーシスの回避は認めなかった。我々はSaos-2細胞に正常に機能するp53蛋白、Rb蛋白が存在しないことを確認し、MG63細胞には存在することを証明した(Morimoto et al,submitted)。以上の結果はアポトーシスの制御にこれらの癌抑制遺伝子の発現が関与している事を示唆する。さらに我々は歯槽骨吸収の機構を解明するために、歯周病原因菌の骨芽細胞に及ぼす影響を検討し、歯周病原因菌の菌体成分から、骨形成阻害物質の部分的同定に成功した(Murata et al,1997)。この阻害因子はヒト骨芽細胞の分化を抑制し、さらにMG63細胞にアポトーシスを誘導する新しい蛋白である(Morimoto et al,in press)
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