研究概要 |
骨形成において、分化した骨芽細胞は骨基質を産生し、あるものはその基質によって囲まれて骨の内に入り骨細胞となる。他の骨芽細胞は新たに生成された骨の表面にそのまま留まり、いわゆるライニング骨芽細胞となり、次の骨基質を形成する。この骨形成過程で50-70%の骨芽細胞はアポトーシスによって死滅すると考えられている。骨芽細胞のアポトーシスを研究するために、我々はインビトロで骨芽細胞様の性質を有するヒト骨肉腫由来のSaos-2細胞とMG63細胞及びマウス骨芽細胞であるMC3T3-El細胞を用いた。 位相差顕微鏡観察、WST-1試験により、オカダ酸はSaos-2細胞、MG63細胞、MC3T3-El細胞に細胞障害を引き起こした。また、オカダ酸はこれらの骨芽細胞にクロマチンの凝集、核の断片化を誘導した。さらに、オカダ酸は濃度および時間依存的に骨芽細胞のDNAラダー形成を誘導し、その至適濃度は20nMであった。カリクリンAも同様にこれらの骨芽細胞にアポトーシスを誘導し、その至適濃度は2nMであった。これらの濃度はインビトロで細胞内のPPlとPP2Aを阻害する濃度である。よって、細胞内の蛋白質脱リン酸化酵素活性を阻害することにより、オカダ酸とカリクリンAは骨芽細胞にアポトーシスを誘導するもめと考えられる(Morimoto et al,1997)。アポトーシスは遺伝子に組み込まれた、積極的な細胞死であるため、細胞死の実行には特異蛋白の新生またはその活性化が必須である。オカダ酸により誘導されるMG63細胞のアポトーシスは蛋白合成阻害剤、サイクロヘキシミド、ピューロマイシン、とRNA合成阻害剤アクチノマイシンDにより抑制されるが、オカダ酸によるSaos-2細胞のアポトーシスはこれらの阻害剤によって抑制されなかった(Morimoto et al.in press)。このことは、細胞の種類により、アポトーシス誘導経路、およびその実行過程に差があることを意味する。 PP1はそのアイソザイムの種類により、PPlα,PPlγ-1,PPlγ-2,PPlδに分類される。そのうち、PPlγ-2は精子形成細胞に特異的に存在するアイソザイムである。骨芽細胞におけるこれらの酵素の局在は非常に特異的で、特に、PPlδは細胞核の核小体に強力に発現している(Haneji et al,1998)。この発現様式はリボソームRNAの合成場と考えられ、硝酸銀により染色されるNucleolar Oregions Regions(NORs)の細胞内局在と酷似して興味深い.
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