研究概要 |
味蕾細胞の生存のためには支配神経の存在が必要不可欠である。すなわち、支配神経切断後に味蕾は消失するが、そのさい味蕾細胞はアポトーシスをおこし死んでしまうことが、われわれの以前の研究で確かめられた。このことから、味蕾の支配神経に味蕾細胞を維持し、アポトーシスを抑制する栄養因子が含まれると推定された。そこで、この栄養因子の解明のために、神経細胞に対して栄養効果を持つGDNFなどの物質が神経切断後の味蕾細胞のアポトーシスを抑制する効果があるかどうかを調べることにした。この実験は、栄養因子と推定される物質が確実に舌の味蕾に作用することが前提である。そこで、昨年バリノマイシン投与後の味蕾を観察して変化がみられなかったが、予備実験として、この実験手技を改善して再びこの実験を試みた,バリノマイシンは、Caイオンを細胞内に流入させる作用のあるカリウムイオノフォアである。バリノマイシンをマウス舌有郭乳頭付近に0.5-2.0mg注入し、アポトーシス核を検出するDNA nick end labeling法により調べたところ、有郭乳頭の味蕾細胞に陽性細胞が出現した。また、有郭乳頭の溝に開口するエブネル腺の導管と終末部にも陽性細胞が見られた。このことから、味蕾細胞のアポトーシスにはCaイオンの過剰な流入が関与することがわかった。また、確実に味蕾ヘ薬物を作用させる方法も確立することが出来たので、現在、種々の増殖因子などを投与して神経切断後の味蕾細胞死が防げるかどうかを検索中である。
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