歯胚と軟骨の石灰化に関する分子生物学的研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09671862
• 研究機関: 岩手医科大学
• 研究代表者: 名和 橙黄雄 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (50020748)
• 研究分担者: 藤原 尚樹 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (20190100) ; 山本 仁 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (80265165) ; 石関 清人 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (50057775)
• キーワード: Tooth germ / Cartilage / Meckel's cartilage / Cacification / Tissue culture

研究概要

(1) 軟骨細胞の形質転換に関する研究:石灰化基質を形成しないメッケル軟骨の消失過程を、下顎骨貫通部と軟組織貫通部に分けて検討した.その結果、下顎骨貫通部メッケル軟骨では、内軟骨性骨化と同様に石灰化軟骨部位への血管の侵入と骨芽細胞が認められた.吸収端ではTRA陽性の多核巨細胞とマクロファージによる活発な吸収像が認められた.一方、軟組織貫通部では貪食系細胞の出現は認められず、軟骨細胞がtype IIコラーゲンからtype Iコラーゲンを発現する線維芽細胞へと形質転換することが明らかになった.さらに、培養軟骨細胞の骨細胞への形質転換をosteopontinによる免疫染色とin situ hybridization法によって検討した.OsteopontinのmRNAの発現は培養に伴って軟骨結節の球形細胞に増加し、それとともに周囲石灰化結節にosteopontinの免疫陽性反応が認められた.結節周辺の線維芽細胞様の細胞にはmRNAの発現は認められなかった.この結果から、軟骨結節に由来する軟骨細胞が骨細胞へ転換する可能性が示唆された.
(2) enamel-free areaの発現に関する:齧歯類臼歯咬頭頂にみられるエナメル質の欠如した領域であるenamel-free areaの形成は、内エナメル上皮の分化と機能に依存している。enamel-free areaとその他の領域の内エナメル上皮における微細構造、アルカリホスファターゼ活性さらにアポトーシスについて検討した結果、enamel-free areaの内エナメル上皮は他の領域の内エナメル上皮に比較して発生初期の短期間に分泌型から吸収型の細胞に変化試、一部の細胞は萌出までの間にアポトーシスにより消滅することが判明した。さらに、amelogenin mRNAの発現をin situ hybridization法により検討した結果、enamel-free areaの内エナメル上皮は歯の発生初期にはamelogenin mRNAを転写する細胞に分化するが、その発現期間は極めて短期間であることが判明した.このような内エナメル上皮の機能変化が特有のenamel-free areaの形成に関与していることが明になった.

研究成果

• [文献書誌] K.Ishizeki.,M.Kubo.,H.Yamamoto and T.Nawa: "Immunocytochemical expression of type I and type II collagens by rat Meckel's chondrocytes in culture during phenotypic transformation" Archives of Oral Blology. 43. 117-126 (1998)
• [文献書誌] Y.Harada and K.Ishizeki: "Evidence for transformation of ch ondrocytes and site-specific resorption during the degradation of Meckel's carti lage" Anatomy and Embryology. 197. 439-450 (1998)
• [文献書誌] K.Ishizeki.,S.Nomura.,M.Takigawa.,H.Shoji and T.Nawa: "Expression of osteopontin in Meckel‘s catrilage cells during phenotypic transdifferentiation in vitro,as detected by in situ hybridization and immunocytochemical analysis" Histochemistry and Cell Biology. 110. 457-466 (1998)
• [文献書誌] H.Yamamoto.,K.Ishizeki.,j.Sasaki and T.Nawa: "Ultrastructural and histochemical changes and apoptosis of inner enemel epithelium in rat enamel-free area" J.Craniofacial Genetics and Developmental Biology. 18. 44-50 (1998)
• [文献書誌] H.Yamamoto.,J.Sasaki.,K.Ishizeki and T.Nawa 他: "Characterization of the inner anamel epithelium in the enamel-free area based on the ability to secrete enamel protein demonstrated by in situ hybridization and immunohistochemistry" Acta Anatomica. 160. 232-238 (1998)