研究概要 |
グラム陰性菌体内毒素は多くの細胞に様々な生物活性を有し,免疫担当細胞のB細胞やマクロファージに対する作用についてはその著細か明らかにされている。T細胞に対する内毒素の生物活性については不明であったが,最近,ごく僅かのT細胞が内毒素によって活性化されることや著者らによるγδ型T細胞への活性化作用が明らかになった。さらに抗原特異的なT細胞の誘導にも何らかの作用をしていることや誘導されたメモリーT細胞が従来のマクロファージ依存性に活性化されるのとは異なる活性化機序を示すことを既に明らかにした。さらに9年度の本研究では内毒素と抗原で誘導されるメモリーT細胞の活性化機序を明らかにした。本研究ではT細胞活性化の際に多数出現するNK細胞の役割を明らかにすることを目的とし実験を行った。その結果以下のような成績が得られた。(1)HRBC(抗原:馬赤血球)のみ,あるいはHRBCとリピドAを投与されたマウスT細胞[それぞれT(HRBC)とT(HRBC+リピドA)]を抗αβTCR抗体共存下で培養すると,T(HRBC+リピドA)細胞のみが活性化(^3H-TdR取り込み増加)されたが,このT(HRBC+リピドA)細胞群を抗CD80抗体あるいは抗NK1.1抗体と補体処理をするとその活性化は消失した。(2)同様の結果はC3H/HeN系マウスでは認められず,C57BL/6マウスで認められた。しかしC3H/HeN系でも抗asialo GM1抗体と補体処理で認められた。(3)T(HRBC+リピドA)細胞のPCR法にょるIL-2とIL-4の発現を調べるとIL-4mRNAの発現が強く認められた。(4)T(HRBC+リピドA)細胞を抗αβTCR抗体共存下で培養後の上清中のIL-2とIL-4を測定するとIL-4産生が多く認められた。以上の成績より,内毒素は抗原との投与によりメモリーT細胞を誘導し,そのメモリーT細胞はNK細胞をアクセサリー細胞とするTh2細胞に属することが明らかになった。
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