研究概要 |
菌体内毒素は多くの細胞に様々な生物活性を有しているが免疫担当細胞のT細胞に対する作用は不明であった。著者らはγδ型T細胞への活性化作用を明らかにした。さらに抗原特異的なT細胞の誘導にも何らかの作用をしていることや誘導されたメモリーT細胞が従来のマクロファージ依存性に活性化されるのとは異なる活性化機序を示すことも既に明らかにした。本研究では内毒素と抗原で誘導されるメモリーT細胞の活性化機序とその際に誘導されるNK細胞の役割を明らかにすることを目的とした。そこで内毒素[合成リピドA,LA-15-PP(506)]と抗原(馬赤血球:HRBC)により誘導されるT細胞と抗原のみによるT細胞の違いを調べた。その結果以下のような成績が得られた。(1)HRBCのみ,あるいはHRBCとリピドAを投与されたマウスT細胞[それぞれT(HRBC)とT(HRBC+リピドA)]を抗αβTCR抗体共存下で培養すると,T(HRBC+リピドA)細胞のみが活性化された。(2)T(HRBC)およびT(HRBC+リピドA)をFITC結合抗CD45(180KD)抗体,CD45(220KD)あるいはCD44抗体で染色しFACS解析すると,T(HRBC+リピドA)ではCD45(180KD)とCD44陽性細胞数の増加が認められた。(3)T(HRBC十リピドA)の抗αβTCR抗体による活性化は抗CD44抗体の共存下で抑制され,抗CD28抗体で増強された。(4)T(HRBC+リピドA)細胞群を抗CD80抗体あるいは抗NK1.1抗体と補体処理をするとその活性化は消失した。(5)同様の結果はC3H/HeN系マウスでは認められず,C57BL/6マウスで認められた。しかしC3H/HeN系でも抗asialoGM1抗体と補体処理で認められた。(6)T(HRBC+リピドA)細胞のPCR法によるIL-2とIL-4の発現を調べるとIL-4mRNAの発現が強く認められた。 以上の成績より,リピドAが抗原とともに投与されると誘導される抗原特異的T細胞は多くがメモリーT細胞であり,NK細胞依存性に活性化されTh2細胞に属することが明らかとなった。
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