研究概要 |
細胞間シグナル因子Hedgehog familyのSonic Hedgehog(Shh)、Indian hedgehog(Ihh)遺伝子が、骨形成にどのような働きを担っているかを明らかにするため、骨芽細胞の分化過程におけるBMPとの関係を培養細胞を用いて解析した。 実験にはレトロウイルスベクターによってニワトリSHH-N末活性ドメインを過剰発現し分泌している、ニワトリ線維芽細胞の培養上清を用いた。C3H10T1/2clone8(マウス胎児由来の多分化能のある線維芽細胞)とMC3T3-E1(マウス骨芽細胞様細胞)に与えると、いずれもALP活性の発現が上昇する。このときの種々の遺伝子発現の変化をRT-PCRにより経時的に観察した。 いずれの細胞とも、培養上清中のSHHに応答して、Shhシグナル伝達系の下流に位置するPatched,Gli遺伝子の発現は上昇したが、BMP2,BMP4,BMP6,BMP7,BMP receptortype-IA,-IB,-IIの各遺伝子は有意な発現の変化を示さなかった。MC3T3-E1ではBGP,PTH/PTHrP receptor遺伝子の発現が誘導され、骨芽細胞の分化が進んでいる。 さらに、培養上清にBMPtype-IA soluble receptor(リガンド結合領域以外のドメインを欠く)を加えると両細胞ともALP活性の発現が抑制された。また、培養上清で前処理した後BMP2を与えると、それぞれ単独で処理したときよりもALP活性の発現上昇が大きくなり、SHHとBMPには相乗作用があることがわかった。加えて、培養上清の供給源となったSHH過剰発現線維芽細胞はヌードマウスの筋肉中に移植すると骨を形成することができる。 以上のことは、骨芽細胞の分化過程において、SHHとBMPの各シグナル伝達系に相互作用のあることを示唆している。IHHについても同様の実験を行っている。
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