研究概要 |
Hedgehogは種々の組織、器官の形成過程で重要な役割を担っている。Sonic hedgehog(SHH)のノックアウトマウスでは脊椎骨や四肢末梢骨の欠損などがみられる。また、Indian hedgehog(IHH)は軟骨組織で発現し、軟骨細胞の分化を調節していることが知られている。しかし、これらのHedgehogsの骨芽細胞の分化および骨形成過程における作用機序は未だに分かっていない。本研究では、この点を明らかにするために種々の実験を行い以下の結果を得た。 (1) 骨折実験:骨折前の肋骨ではShh mRNAの発現は検出できなかったが、骨折後12-48時間で明かな発現の誘導がみられ、骨折後72時間以降減弱した。Ihh mRNAの発現は骨折後5日目で著明に増強した。PtcとGliのmRNAは骨折12時間以降で増強していた。 (2) 培養実験:SHH-N-supおよびIHH-supは共にC3H10T1/2とMC3T3-E1細胞のPtc,Gli,osteocalcin mRNAの発現を上昇させ、ALP活性も促進した。この時促進されたALP活性はsoluble BMP receptor IA(sBMPR-IA)の添加で用量依存的に抑制された。また、SHH-N-SupおよびIHH-supはC3H10T1/2細胞のaggrecan mRNAの発現を誘導した。10μg/ml以下のrSHH-NでC3H10T1/2とMC3T3-E1細胞を3日間処理してもALP活性は有意に促進されなかったが、10μg/mlのrSHH-Nで両細胞を6日間処理するとALP活性は有意に上昇した。また、rSHH(1μg/m)とrhBMP-2(500ng/ml)を同時に添加するといずれの細胞でもALP活性が著明に上昇し、その作用はrhBMP-2(500ng/ml)単独より強かった。 (3) 移植実験:Shh-NまたはIhhを過剰発現している鶏胚線維芽細胞を筋肉内に移植すると、両者とも異所性の軟骨・骨形成を誘導したが、rSHH-N(10μg)を筋肉内に5週間移植しても軟骨・骨形成は確認できなかった。しかし、rSHH-N(10μg)とrhBMP-2(2μg)を一緒に筋肉内に移植するとrhBMP-2(2μg)単独のときより顕著な異所性の軟骨・骨形成が誘導された。 以上の結果より、SHHやIHHは骨折の治癒過程などでBMPの作用を増強することで骨芽細胞の分化と骨形成を促進していることが示唆された。
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