研究概要 |
S.mutans(109cS株)は,亜致死濃度の抗生物質などの他、ストレス応答あるいは熱ショック応答を誘導するような色々な条件でグルカン依存性凝集を起こす.また、蔗糖PTS(ホスホトランスフェラーゼ系)遺伝子群の近傍に存在する大腸菌のアンチタ-ミネータコンプレックスを形成するNusB蛋白質の遺伝子ホモローグを失活してもこの菌はグルカン依存性凝集を起こす.その機構を明らかにするための本年度の研究計画は,1)gbpC遺伝子発現のモニターと2)gbpC遺伝子領域はインタクトであるにもかかわらずグルカン依存性凝集能を失った変異株の変異遺伝子領域を解析することであった.1)についてはRT-PCRによりgbpC遺伝子のmRNAを検出することができ,上記培養条件やnusB失活により,あきらかにgbpC遺伝子発現が上昇していたのが確認できた.従って,上記培養条件の刺激がある経路(細胞内の情報伝達経路)を通り,このGbpC蛋白質の発現へ至ると考えられ,NusBホモローグがその経路のどこかで関与し,GbpC蛋白質発現をdown regulateしていると考えられた.2)についてはパルスフィールドゲル電気泳動を用いた変異株の変異遺伝子領域を解析した結果,それらの株の染色体上で共通して,50kb以上のかなり大きい領域の重複がおこっていたことが見いだされた.一般の6塩基認識の制限酵素による分解後のゲル電気泳動とサザン分析では,この重複領域があまりに大きかったため全く同じ泳動パターンになってしまい,その検出は不可能であった.それらの変異株において重複のおこっていた両端の部位をマッピングすることにより,重複の起こった共通領域を20kb以下にまで限定することができた.この領域はnusB部位から60kb程離れた領域であり,ここにもう一つGbpC蛋白質発現を調節している遺伝子の存在が推定された.
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