研究概要 |
S.mutans(109cS株)は,亜致死濃度の抗生物質などの他,ストレス応答あるいは熱ショック応答を誘導するような色々な条件でgbpC遺伝子を発現してグルカン依存性凝集を起こす.昨年度までの研究により,gbpC遺伝子がインタクトであり且つグルカン依存性凝集をおこさない遺伝子重複変異株を得ていること,複数のそれら変異株においてその重複領域に共通した領域のあることが分かり,その共通領域にgbpC遺伝子の発現調節を担っている遺伝子が存在することが推定されたこと,等からその共通領域を20kb以下にまで限定した.そこで今年度の目標はその領域を更に狭め関与遺伝子を同定することであった.この過程で,パルスフィールド電気泳動法を用いた染色体DNAの詳細な解析の結果,重複の起こる状況をうまく説明できるある一つの機構を提案することが出来るに至った(JapaneseJournal of Oral Biology 40:506-514,1998に報告).その結果,前述の共通領域に存在すると推定されたある未知遺伝子の重複によるその機能亢進により,gbpC遺伝子発現が抑制されるという推定が,より確度の高いものであると考えられた.そして前述の約20kbのほぼ中央にgbpC遺伝子の発現調節を担っている一つのオープンリーディングフレーム(ORF)を同定することが出来た.このORFのコードするアミノ酸配列の相同性検索より,これは,細菌で普遍的に認められる二成分制御系のレスポンスレギュレータホモローグであることがわかった.しかし,二成分制御系のもう一つの構成要素であるセンサータンパク質,をコードすると思われる領域はこのORFの周辺には存在しなかった.今後はこのセンサータンパク質の同定とこのレスポンスレギュレータホモローグのgbpC遺伝子に対する発現制御様式を明らかにする.
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