研究概要 |
S.mutansは色々なストレス条件でgbpC遺伝子を発現してグルカン依存性凝集を起こす.昨年度までの研究から,gbpC遺伝子の発現調節を担っている一つの遺伝子gcrRを同定することが出来た.更にこのgcrR遺伝子産物が実際にgbpC遺伝子発現を調節しているか否かをin vitroおよびin vivoで観察するため,大腸菌におけるgbpCのレポーター遺伝子の構築及びS.mutansでのモニター株構築を試みた.複数のレポーター遺伝子を用いこれを行ったが,用いた遺伝子によってはgbpC遺伝子の発現を正しくモニターすることができないことが分かり,本菌においては現在の所lacZ遺伝子のみがこの目的に使用できるレポーター遺伝子であると考えるに至った.そしてこのモニター株での観察から,gcrR遺伝子欠失変異株は構成的にgbpC遺伝子を発現すること,S.mutansはキシリトール存在下で長く継代培養していると,gbpC遺伝子が構成的に強発現している株が現れること等が見いだされた.今後はこの点も含め,このgbpC::lacZモニター株を用いて,gbpC遺伝子発現をモニターしながら,この発現調節のメカニズムを解析して行く.また現在,gcrR遺伝子産物の精製を行っており,今後これを用いてゲルシフトアッセイを行う予定である. gbpC遺伝子は本学で分離されたS.mutansの1株において,グルカン依存性凝集という形質を指標にして同定された.しかし,S.mutansの代表的な株(いわゆるtype strainも含めて)のいくつかは冒頭で示したストレス条件等でグルカン依存性凝集を示さない株がある.これらの株のgcrR遺伝子欠失変異株もグルカン依存性凝集を全く示さなかった.その1株であるOMZ175株はgbpC遺伝子の中程にA→Tの変異が見いだされ,このためリジンのコドンが停止コドンに変異していた.これは研究室で何代も継代されたための変異なのかを今後検討する必要がある.
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