研究概要 |
細胞内における各種mRNAの発現有無については最近多くの研究がなされているが、mRNAの細胞内局在についてはほとんど知られていない。そこで本研究は、beta-actin mRNAおよびgamma-actin mRNAのprobeを用い、正常ラット頭蓋骨骨芽細胞における各種actin mRNAの細胞内局在分布についてIn situ hybridization法を用い検討した。検討するにあたり骨芽細胞の培養細胞を用いるため、正常及び大理石骨病モデルラット(tl/tl)、において、頭蓋骨より骨芽細胞を分離し初期培養(Jackson et al.J.Cell Biochem.55 366-372 1994の方法)を行った。In situ hybridization法のための試料には、培養3,5日目のものを用いた。前処理後、50%formamideでincubateし、その後はbeta及びgamma-actinmRNA Probeを含むbuffer液にてhybridizationを行った。anti-digoxigeninmouse IgG-AP conjugateを使いincubate後、染色、封入後、光顕観察を行った。(1) (昨年までの結果)正常骨芽細胞では、beta-actin mRNAは細胞突起、細胞膜周辺部、さらに細胞の核周辺一方向のみの細胞質部分にシグナルが観察され、gamma-actin mRNAは核周囲全周にシグナルが観察された。これらの結果から、正常骨芽細胞ではbeta-actin mRNAとgamma-actin mRNAとはそれぞれ細胞内局在部位が異なることが明らかになった。一方大理石骨病ラットの骨芽細胞では、beta-actin mRNAおよびgamma-actin mRNA共に細胞内ではdiffuseに分布し、細胞内局在化が崩れていた(J.Ce11 Sci.111.1998)。 (2) (本年度結果)csf-1投与後大理石骨病モデルラットの培養骨芽細胞のbeta及びgamma-actin mRNAの局在化について、ISH法を用いて検索した。その結果beta-actin mRNAについては、control群のmRNA局在部位に回復していた。一方gamma-actin mRNAについてはdiffuseで回復していなかった。以上の結果より大理石骨病モデルの骨芽細胞では、上記各mRNAの細胞内輸送機構において、csf-1がbeta及びgamma-actin mRNA輸送において異なる作用をもつ可能性が示唆された。来年度はこれら機構異常を解明するため、統計学的に検討したい。
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