研究概要 |
成人性歯周炎は歯牙の喪失による咀嚼障害を起こすことにより患者のquality of lifeを著しく低下させる。しかし本疾患の病因にはいまだ不明の点が多い。我々は若年性歯周炎病原菌Actinobacillus actinomycetemcomitans,成人性歯周炎の病原菌Bacteroides forsythus,Treponemadenticolaの病原因子の遺伝子をクローニングしその作用機序を明らかにすることを試みた。 細菌の病原性のメカニズムを調べるのには、それぞれ個々の病原因子の欠損株を作成し野生株との間で比較を行い、それぞれの病原性を調べることが必要である。欠損株の解析によってその病原性が明らかにすることができる。われわれはすでに塩基配列が明らかになっているT.denticolaのprotease(dentilisin)遺伝子の塩基配列とエリスロマイシン耐性遺伝子から、相同組換え用のプラスミドを作った。このプラスミドを利用しdentilisin欠損株を作成しその性状を検討した。変異株では、outer sheathの主要タンパクであるmajor outer shcath prtoetenのhigh molecularmass oligomeric proteinの形成が低下するとともに、菌体表層の疎水性が低下していることがわかった。さらにマウスの膿瘍形成のモデルを用い、dentilisinの膿瘍形成能力を調べると、明らかにdentilisin欠損株の膿瘍形成能が低下していた。この結果からdentilisinは明らかに本菌の病原性に関与していることを示すことができた。(J.Bacteiriol.180,3837-3844)。 さらにB.forsythusのタンパク分解酵素の遺伝子(prtH)は溶血活性を持つproteaseであること(Infect.Immun.:65,4888-4891)、A.actinomycetemcomitansの線毛遺伝子(fap)の塩基配列も明らかにすることができた(Microbiol.Pathog.1997:23,63-69)。
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