研究概要 |
成人性歯周炎は歯牙の喪失による咀嚼障害を起こすことにより患者のquality of lifeを著しく低下させる。しかし本疾患の病因にはいまだ不明の点が多い。我々は若年性歯周炎病原菌Actinobacillus actinomycetemcomitans,成人性歯周炎の病原菌Bacteroides forsythus,Treponema denticolaの病原因子の遺伝子をクローニングしその作用機序を明らかにすることを試みた。 定着因子としてA.actinomycetem comintansの線毛の遺伝子配列を決定し、その発現が線毛非保有株で低下していることを明らかにした(Microbiol.Pathog.1997,23:63-69)。 プロテアーゼは宿主組織に対して傷害性を示す。B.forsythusの病原性を明らかにする目的で、その表層プロテアーゼの遺伝子配列を決定した。その結果本酵素が分子量47,843の溶血活性を持つプロテアーゼであることを明らかにした(Infect.Immun.1997,65:4888-4891)。 さらに胃潰瘍原因菌H.pyloriと口腔内細菌の相互作用についても検討を行った。 細菌の病原性のメカニズムを調べるのには、それぞれ個々の病原因子の欠損株を作成し野生株との間で比較を行い、それぞれの病原性を調べることが必要である。欠損株の解析によってその病原性が明らかにすることができる。われわれはすでに塩基配列が明らかになっているT.denticolaのprotease(dentilisin)遺伝子の欠損株を作成しその性状を検討した。変異株では、major outer sheath prtoetenのhigh molecular mass oligomeric proteinの形成が低下するとともに、菌体表層の疎水性が低下していることがわかった。さらにマウスの膿瘍形成のモデルにより、明らかにdentilisin欠損株の膿瘍形成能が低下していた。この結果からdentilisinは明らかに本菌の病原性に関与していることを示すことができた。(J.Bacteiriol.1998,180:3837-3844)
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