研究概要 |
1、 酪酸誘導アポトーシスにおけるアポトーシス関連蛋白(bcl-2,Bax,Fas及びFasリガンド)の関与をWestern blotting解析したところ、bcl-2発現の低下が認められ更にbcl-2リン酸化体も消失していた。一方Bax,Fas及びFasリガンドの発現に変化は認めらねなかった。 2、 酪酸透導アポトーシスにおけるp53遺伝子の関与を明らかにするため、p53欠損マウスを用いて解析を行った。酪酸はp53欠損マウスから調整した胸腺細胞、脾臓T細胞及びB細胞に対し濃度依存的及び経時的にアポトーシスを誘導し、野生型マウスとの間に有為差は認められなかった。 3、 PBMC及びJurkat細胞を酪酸と共に培養後、細胞表層ホスファチジルセリン(PS)の表出をFACS解析した。いずれの細胞に対してもPS表出が認められ、酪酸は経時的にアポトーシス初期細胞及びアポトーシス後期細胞いずれをも増加させていることが判明した。 4、 酪酸で誘導されるPBMC及びJurkat細胞のアポトーシスがCaspaseカスケードの活性化を伴うものか否か検討した。いずれの細胞においてもCaspase1及びCaspase8活性の増加は認められないものの、Caspase3及びCaspase6活性は酪酸添加により経時的な増加が認められた。 以上の結果から、酪酸はアポトーシスを抑制する遺伝子bcl-2の発現を抑制することによりアポトーシスを遂行するものと思われるが、アポトーシスを促進する遺伝子Baxの発現は増強作用を示さなかった。また酪酸誘導アポトーシスにおいて、Fas-Fasリガンド系並びにp53の関与は少ないものと示唆された。bcl-2ファミリーがチトクロムcをミトコンドリアに留めておくことによりCaspaseの活性化を抑制することが報告されており、本研究から酪酸はbcl-2を抑制することによりCaspase3及び6を活性化しているものと考えられる。
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