現代人による口腔内疾患の典型的なものとしては、う蝕、および、歯周病が挙げられる。これらの口腔疾患を免疫応答を用いて予防することは、今後予想される高齢化社会を迎えるにあたって非常に意義深いものと考えられ、その1つに受動免疫がある。報告者の所属する研究室では、「人工抗体」の1種である、single chain variable fragment(scFv)を作成し、抗ヘマグルチニン活性を有するタンパク質を大腸菌を宿主として産生することに成功している。また、報告書は非う蝕原性口腔内細菌であるStreptococcus gordoniiを宿主とした分泌系の作成を試みた。その結果、B.circulansのCITaseをS.gordoniiより分泌生産することが可能となった。続いて有用タンパク質を分泌生産することが可能なリプレイスメントセラピーを計画し、薬剤耐性遺伝子をリボソームタンパクS20と置き換えることを計画した。しかしながら様々な手法を用いたにもかかわらず、S.gordoniiのS20タンパクをコードする遺伝子はクローン化されなかった。 一方、口腔内細菌の形質転換のための現在汎用されているプラスミドはpVA380-1に由来しており、コピー数はそれほど高くない。そこで、他のグラム陽性細菌に由来するpLS5を複製領域としたシャトルプラスミドを構築し、CITaseの分泌生産性の向上が見られた。また、上述したscFvは大腸菌を宿主としたので生産性が低かったが、これをグラム陽性細菌である、B.brevisより分泌生産させることより、大幅な産生量の向上がなされた。
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