Turner(1990)は、日本人を含む黄色系人種が歯の形質からSinodontとSundadontの二つのグループに分けられることを報告した。埴原(1991)は、日本人の成立についてSundadontの形質を受け継いでいる縄文人が南方から日本列島に住みつき、その後、東シベリアで寒冷地適応したSinodont傾向の強い弥生人が渡来し、これら二つのグループの混血により成り立ったと考え、二重構造論仮説を提唱した。 この研究は、Turnerのグループ分けした歯の形質のうち、日本人の下顎第1大臼歯の遠心根の根管数に着目し、1根管と2根管のグループ間で、他歯の形質や大きさに違いがあるのか否かを確認することである。また、この違いがSinodontとSundadontのグループに対応するか否かを比較検討することを目的としている。 上記の目的を達成するため、今年度は研究資料の収集に努めた。歯科医院にて治療中の下顎第1大臼歯の遠心根の根管数を肉眼観察およびレントゲン写真により確認し、その後、全顎印象を採得し石膏模型標本を作成した。収集できた石膏模型標本は、2根管のもの40個体、1根管のもの29個体の合計69個体であった。今年度は研究資料の収集が主目的であり、詳細な分析は来年度以降行う。石膏模型標本を観察したところ、歯の大きさは1根管グループの方が2根管グループより小さい傾向がみられた。
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