グラム陰性菌の多くが菌体外にベジクルを放出することが知られているが、その性質や病原性については不明な部分が多く残されている。歯周病原細菌の一つであるPorphromonas gingivalis(以下P.gingivalis)も菌体外にベジクルを放出することが知られており、本研究はこのベジクルの病原作用を解析することを目的として取り組んできた。これまでにベジクルは炎症性サイトカイン(IL-1βおよびTNFα)の発現に関与することを確認してきたが、さらにP.gingivalis由来ベジクルはマクロファージに対してiNOSを活性化し、一酸化窒素(NO)を誘導しうることを見い出した。マクロファージを用いた実験で一般的にIFNγやLPSが刺激剤として用いられるが、本研究の結果、ベジクルは刺激剤を用いなくても単独で細胞にNO産生を誘導した。さらにNOの産生量は通常の用いられる量のIFNγやLPSで刺激した場合と比較して、同等かあるいはそれ以上であった。 本研究の結果、P.gingivalisが菌体外に放出するベジクルは炎症性サイトカインの誘導のみならず、様々な障害活性を有するフリーラジカルをも誘導することが明らかにされたことから、P.gingivalisが産生するベジクルは重要な病原因子として位置ずけられることが示唆される。
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