マウスコンドロモジュリン-Iのクローニングと発現局在

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09671892
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 開 祐司 大阪大学, 歯学部, 助教授 (40144498)
• 研究分担者: 井上 博之 大阪大学, 歯学部, 講師 (90167271)
• キーワード: 軟骨細胞 / 細胞分化 / 血管新生 / コンドロモジュリン-I / 血管内皮細胞 / in situ hybridization / 形態形成 / 骨形成

研究概要

従来、軟骨細胞に関する研究は、主に動物組織から分離される軟骨細胞初代培養系を用いて解析されてきた。しかし、このような分化成熟した細胞を用いた初代培養系では、軟骨細胞の分化現象を明らかにすることが原理的に困難であった。また、初代培養軟骨細胞は、分化機能を喪失するために継代培養することが出来ない。そこで、我々は、軟骨の分化現象を再現するin vitro培養系を、マウスEC由来クローン化細胞株ATDC5を用いて構築した。本培養系は、軟骨前駆細胞からの軟骨分化誘導を再現するのみならず、増殖後、肥大化・石灰化といった軟骨後期分化をも忠実に再現することを明らかにした。
一方、我々は、軟骨組織抽出物に新規の細胞増殖制御因子を発見し、コンドロモジュリン-Iと命名した。コンドロモジュリン-Iは、軟骨細胞の増殖とマトリックス産生ならびにコロニー形成を促進した。また、骨芽細胞の増殖を促進し、血管内皮細胞の増殖と管腔形成を制御した。
そこで、軟骨分化誘導したATDC5細胞培養系を利用して、マウスコンドロモジュリン-I前駆体cDNAのクローニングに成功した。マウスコンドロモジュリン-I前駆体は、既にクローニングしたウシ・ヒトと比較してアミノ酸レベルで約90%の相同性を有し、種間で良く保存されていた。成熟型コンドロモジュリン-IのC-端末側2/3の領域は特に良く保存され、活性領域を構成している可能性がある。さらに、マウス胎仔切片を用いたin situ hybridizationで、本遺伝子の発現は軟骨性骨原基の形成と相関して認められ、軟骨組織に局在していた。ATDC5細胞軟骨分化系をもちいたノーザン解析の結果、本遺伝子の発現は、軟骨分化依存的に誘導され、後期分化の進展と共に消失することが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Yutaka Otsuka: "Requirement of FGF Signaling for Regeneration of Epiphyseal Morphology in Rabbit Full-Thickness Defects of Articular Cartilage." Dev.Growth Diff.39. 143-156 (1997)
• [文献書誌] Yoshihisa Mori: "Simulation of osteoblast proliferation by cartilage-derived growth promoting factors,chondromodulin-I and -II." FEBS Lett. 406. 310-315 (1997)
• [文献書誌] Chisa Shukunami: "Celluar Hypertrophy and Calcification of Embryonal Carcinoma-Derived Chondrogenic Cell Line ATDC5 In Vitro." J.Bone Min.Res.12. 1174-1188 (1997)
• [文献書誌] Yuji Hiraki: "Inhibition of DNA synthesis and tube morphogenesis of cultured vascular endothelial cells by chondromodulin-I." FEBS Lett.415. 321-324 (1997)
• [文献書誌] Yuji Hiraki: "Identificaion of Chondromodulin-I as A Novel Endothelial Cell Growth Inhibitor : Purification and Its Localization in The Avascular Zone of Epiphyseal Cartilage." J.Biol.Chem.272. 32419-32426 (1997)
• [文献書誌] Hiroyuki Inoue: "Identification of An Autocrine Chondrocyte Colony-Stimulating Factor ; Chondromodulin-I Stimulates Colony Formation of Growth Plate Chondrocytes in Agarose Culture." Biochem.Biophys.Res.Commun.241. 395-400 (1997)