研究概要 |
副腎髄質は交感神経興奮時,ニコチン受容体刺激に応じてカテコールアミンと共にオピオイドペプチドを放出することが知られているが,このオピオイドペプチドの作用点,生理的意義等についてはまだまだ不明な点が多い.我々は副腎髄質由来のオピオイドペプチドと,生体のストレスに対する防御機構との関係を知る目的で,まず培養ウシ副腎髄質クロマフィン細胞(以下,クロマフィン細胞)を用い,副腎から放出される主要なオピオイドペプチドであるメチオニン・エンケファリン(以下,ME)の動態を調べ,カテコールアミンの放出との関連について検討した. アセチルコリンおよびニコチン刺激によりMEはクロマフィン細胞より用量依存的に遊離された.また,モルヒネ,U-50,488H等のオピオイド作用薬はニコチン刺激時のMEの遊離を抑制した.また,ストレス刺激に相当する長時間(24h)ニコチン刺激を加え,一旦洗って通常の培養液に戻してから2-6時間後に再びニコチン刺激を加えた細胞では,対照群と比較してカテコールアミン遊離量,ME遊離量は著明に減少した.これらのME遊離量の変動は,カテコールアミン遊離量の変動とよく一致していた.しかし,ニコチン長時間刺激時にオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソンを同時に作用させた細胞では,カテコールアミンとMEの比が変化し,二度目のニコチン刺激に伴うMEの遊離量が相対的に増加する傾向が認められた.このことはストレス負荷時に,副腎髄質由来のオピオイドペプチドが副腎髄質自身に作用している可能性を示唆している. 今後,オピオイド受容体刺激やニコチン受容体刺激に伴うクロマフィン細胞におけるオピオイド受容体mRNAの変化について調べ,血中に分泌されたME等のオピオイドペプチドが免疫系細胞等にどのような作用を及ぼすかについても検討する予定である.
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