研究概要 |
申請者らは、ヒト接合上皮及び歯肉上皮細胞を無血清条件下で培養するとアポトーシスの指標であるヌオソーム単位のDNAの断片化がHGFにより抑制されることを見出した。平成9年度は、無血清条件化で誘導されるアポトーシス誘導機構とHGFによる抑制の分子機構を、アポトーシスの実行分子であるInterleukin-1β converting enzyme (ICE,現在Caspase-1と命名されている)様プロテアーゼの活性化とアポトーシス抑制分子であるBcl-2の発現を解析することにより考察した。その結果、両細胞を 無血清条件化で培養すると、12時間後にはCaspase-3の活性化(酵素活性で2-3倍)が起こり、その活性化は24時間後まで持続することを見いだした。さらに、その活性化はCaspase-3の拓凍て基な阻害剤の存在下で完全し阻害され、DNAの断片化も抑制されたことにより、無血清条件下で誘導されるアポトーシス誘導にCaspase-3の活性化が関与していると結論された。従って、HGFはCaspase-3の活性化を抑制することによりアポトーシスを抑制していることが予測された。 また、HGFによるBel-2蛋白の発現を検討した結果、HGFによりBel-2の発現が増加することが明らかになり、HGFはBel-2の発現を増強することによりCaspase-3の活性化を抑制することが示唆された。平成10年度は、Caspase-3の活性化に体するHGFの作用、及びBel-2と同じ機能を有すBel-xの発現に対するHGFの作用について検討する予定である。
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