研究概要 |
申請者らは、ヒト接合上皮及び及び歯肉上皮細胞を無血清条件下で培養すると、アポトーシスの指標であるヌクレオソーム単位のDNA断片が出現し、このDNAの断片化がHGFにより抑制されることを見い出していた。本研究では、これらの細胞のアポトーシス誘導機構と、HGFによるこれらの細胞のアポトーシス抑制の分子機構を、アポトーシスの実行分子であるInterleukin-1β converting enzyme(ICE,現在Caspase-1と命名されている)様プロテアーゼの活性化とアポトーシス抑制分子であるBcl-2の発現を解析することにより考察した。その結果、両細胞を無血清条件下で培養すると、12時間後にはCaspase-3の活性化(酵素活性で2-3倍)が起こり、その活性化は24時間後まで持続することを見い出した。さらに、その活性化はCaspase-3の特異的な阻害剤の存在下で培養すると完全に阻害され、DNAの断片化も抑制されたことより、無血清条件下で誘導されるアポトーシス誘導にCaspase-3の活性化が関与していると結論された。従って、HGFはCaspase-3の活性化を抑制することによりアポトーシスを抑制していることが予測された。また、HGFによるBcal-2タンパクの発現に及ぼす影響を検討した結果、HGFによりBcl-2の発現が増加することが明らかになり、HGFはBcl-2の発現を増強することによりCaspase-3の活性化を抑制している可能性が示唆された。今後は、Caspase-3に対するHGFの効果、及びBcal-2と同じ機能を有するBCl-xの発現に対するHGFの作用についても検討していく予定である。
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