研究概要 |
SNARE仮説は開口分泌のメカニズムを説明する現在最も有力な仮説であるが、この仮説が外分泌細胞にも適用できるという確証はまだ得られていない。SNARE仮説では分泌顆粒膜と細胞膜にv-SNARE,t-SNAREとよばれる受容体蛋白質が存在し、それらが複合体を形成することで両膜がドッキング・融合すると考えられている。本研究では非神経細胞のt-SNAREの有力候補と考えられるsyntaxin-4とSNAP-23が耳下腺腺房細胞に発現しているかどうか、また、それらのタンパク質がt-SNAREとしての機能を備えているかどうかを検討した。 実験では、まず、RT-PCR法によりラット脳と耳下腺腺房細胞にsyntaxin-4の発現を確認した。次に、syntaxin-4とSNAP-23のペプチド抗体を調製し、これを用いて各タンパク質の発現を調べたところ、耳下腺でsyntaxin-4、SNAP-23の発現が認められた。さらに、VAMP-2、syntaxin-4、SNAP-23に対する特異抗体を用いてこれらのタンパク質間の相互作用を調べた。その結果、脳ではVAMP-2抗体によってsyntaxin-1とSNAP-25が共沈し、SNARE複合体の形成が確認されたが、耳下腺細胞ではVAMP-2抗体でsyntaxin-4、SNAP-23が共沈することも、逆にsyntaxin-4、SNAP-23の抗体でVAMP-2が沈降することもなく、syntaxin-4、SNAP-23がt-SNAREであるという証拠は得られなかった。これらの結果から、耳下腺細胞ではVAMP-2とsyntaxin-4あるいはSNAP-23との結合は弱く、また、他の調節タンパク質によって結合が妨げられている可能性が考えられた。
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