研究概要 |
1.Ca^<2+>蛍光指示薬Fura-2を取り込ませた耳下腺細胞を10μMカルバコール(CCh)で刺激したところ細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_1)の上昇は刺激後約0.4秒で腺腔の近傍からから始まり速やかに細胞全体に広がった。この[Ca^<2+>]_1の変化は腺腔側から基底側に広がるCa^<2+>の波(ウエーブ)のように見えた。Ca^<2+>ウエーブは細胞外のCa^<2+>を除いても見られたことからこの現象は細胞内Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>の遊離によるものと思われる。腺腔から基底側へと伝搬するCa^<2+>ウエーブの速度はCChの濃度の低下とともに遅くなった。低濃度のCCh (<0.5μM)で刺激した時[Ca^<2+>]_1は主に腺腔側領域で上昇し、基底側領域での[Ca^<2+>]_1上昇は小さかった。タプシガ-ジンやイオノマイシンを細胞に作用させるとCa^<2+>遊離は細胞全体でほぼ同時に惹起された。これらの結果はイノシトール1,4,5-三燐酸(IP_3)がCa^<2+>ウエーブを惹起する必須の細胞内シグナルであること、Ca^<2+>ウエーブの発生はCa^<2+>ストアのIP_3感受性の部域差が関係していることを示唆している。 2.耳下腺細胞をサポニンで処理し、膜透過性細胞を作成した。細胞内ストアからのCa^<2+>遊離を低感受性Ca^<2+>蛍光指示薬Mag-fura-2及び膜結合性Ca^<2+>蛍光指示約CalciumGreenC_<18>を用いてモニターした。IP_3は速やかなCa^<2+>遊離を起こした。この反応はIP_3拮抗薬であるヘパリンで抑制された。リアノジン受容体を活性化するcyclic ADP-ribose,カフェイン、リアノジンはCa^<2+>遊離を刺激しなかった。リアノジン受容体は耳下腺腺房におけるCa^<2+>シグナルの生成に関与していないものと思われる。
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