カルデクリンは、急性膵炎患者で低カルシウム血症が頻発することから膵臓から血清カルシウム降下因子として精製クローニングされた因子である。本研究では、カルデクリンが骨吸収抑制作用を示したことから、カルデクリンの骨吸収抑制ドメインからのアプローチと受容体側からのアプローチを検討することを目的とした。まずカルデクリンフラグメントをチオレドキシンとの融合蛋白として大腸菌で発現させアフィニティーカラムで精製した。骨吸収抑制活性は、既報を参考にウサギ大腿骨から調製した骨髄細胞を象牙スライス上で培養し、破骨細胞により形成された吸収窩の面積で比較した。カルデクリンは前後2か所のβ-バレル構造を取ることから、各バレル構造フラグメントの骨吸収抑制活性を検討すると両者に抑制活性が認められた。前半のバレル構造はさらに前後に分割すると後半に骨吸収抑制活性が認められた。後半のバレル構造はジスルフィド結合を改変しても抑制効果に変化がなかった。破骨細胞の単離も既報を参考に行い吸収窩形成系で比較した。単離破骨細胞による骨吸収窩形成系を用いてもカルデクリンは吸収窩形成を抑制したことから、破骨細胞にカルデクリン受容体が存在することが示唆された。そこで、ウサギ単離破骨細胞のcDNAライブラリーを作製した。10^4細胞のウサギ単離破骨細胞から全長cDNAを取得するためにSMART oligo primerとoligo(dT)primerでPCRを行い発現ベクターに組込み、発現ライブラリーの大腸菌のサブプールを作製した。以上のことから、ウサギ破骨細胞カルデクリンレセプター遺伝子の抗チオレドキシン抗体による発現クローニングの系が確立した。
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