研究概要 |
平成9年度の本研究によりラット耳下腺腺房細胞の細胞質にADPリボシル化因子(ARF)が存在し、ARFはGTP依存的に細胞質から分泌顆粒に移行することを明らかにした。ARFにはARF1からARF6までのアイソタイプがあり、副腎のクロマフィン細胞の分泌顆粒膜にはARF6が存在することが報告されている。そこで平成10年度においてはラット耳下腺腺房細胞の分泌顆粒におけるARFの役割を明らかにするためにさらに検討を行い、以下の2つの結果を得た。これらの結果はArchives of Biochemistry Biophysics 357,147-154(1998)に掲載された。 1. 耳下腺腺房細胞の分泌顆粒と相互作用するARFのアイソタイプがARF1であることを同定した。 ARF1,ARF3,ARF5,ARF6に対する特異的な抗体を用いて、GTP依存的に分泌顆粒に移行したARFのアイソタイプはARF1であることを明らかにした。ARF6はラット耳下腺腺房細胞の分泌顆粒膜には存在せず、副腎のクロマフィン細胞の場合とは異なることが示唆された。 2. 耳下腺腺房細胞の分泌顆粒とARF1との相互作用を電子顕微鏡観察により確認した。 分泌顆粒を単離しGTP非水解アナログの存在下で細胞質と加温し、ARF1の移行をおこさせた後に固定した。免疫電子顕微鏡観察によりARF1が成熟した分泌顆粒に結合していることを確認した。従来ARF1が未成熟な分泌顆粒に結合することはPC12細胞で報告されていたが、成熟した分泌顆粒への結合を示したのは本研究が初めてである。
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