研究概要 |
ヒト唾液型シスタチンの遺伝子工学的生産と歯科医学への応用に関する研究を行い、以下の業績が得られた。1.外国の研究者と我々の研究結果を総合すると、ヒトはシスタチンS,SA,SN,CD,M(E)ならびにFを生産することが明らかである。しかしながら、シスタチンM(E)とシスタチンFの遺伝子は我々が明らかにしたシスタチン遺伝子ファミリーのメンバーとは異なる染色体に存在する。2.シスタチン遺伝子ファミリーのCST2座位の二つのallele(CST2^*1とCST2^*2)に対応するcDNAをPCR法によって調整した。つぎに、これらのalleleによってコードされる二つのvariant(シスタチンSA1とシスタチンSA2)の発現・分泌ベクターを構築し、大腸菌に生産させた。組換え型シスタチンSA1とSA2はカラムクロマトグラフィーで単離精製した。これらの組換え型シスタチンはシステインプロテアーゼ(Papain, Ficin,Cathepsin H, Cathepsin C, Cathepsin K)に対して著しい阻害活性の差異を示した。得られた解析結果はシスタチンSA分子の第一ヘアピンループのアミノ酸配列がシステインプロテアーゼ阻害にきわめて重要な役割を果たしていることを示唆した。この知見に基づき、シスタチンSAの第一、第二ヘアピンループの部位特異的突然変異解析を現在行っている。3.破骨細胞は骨代謝に際し、大量のCathepsin Kを分泌し、骨マトリックスタンパク(コラーゲン)を分解するが、この蛋白質分解酵素の活性はヒト血清シスタチンCならびに組換え型シスタチンSA1およびSA2によって著しく抑制されることを見い出した。これに関連し、RT-PCR法によって破骨細胞がシスタチンCやシスタチンMを生産することも発見した。4.ある種のリンパ球に組換え型のシスタチンSA1やシスタチンSA2ならびにヒト血清シスタチンCを作用させるとインターロイキン6が誘導されることを発見した。
|