研究概要 |
植物化学療法を応用して安全性に優れた新規抗齲蝕薬・抗歯周病薬を開発するため、平成9年度に食用植物や生薬から単離・同定した物質について、適用後の口腔薬物動態学的検討、薬理作用機序の解析、ならびに定量のための方法論的開発を行った。その結果、 (1) 抗齲蝕活性緑茶カテキン類のヒト唾液中濃度の選択的分離定量法を確立し、齲蝕予防効果を示す口腔内保持性と生体内動態を解明した(Talanta,46,1998;歯薬療法,17,1999)。 (2) その他の薬理活性フラボノイドに関し、特異的精製法と分離定量法を考案して、薬物動態学的・食品栄養学的実験に応用できる方法を開発した(J.Chromatogr.B,720,1998)。 (3) 化学的プラークコントロールの対照として、クロルヘキシジンのHPLC定量法を開発するとともに、洗口実験からその口腔内保持性の高さを証明した(Caries Res.,33,1999)。 (4) 活性検索過程において、マメ科植物から単離したフラボンがMRSAに抗菌性を示すことを発見し、抗MRSA植物化学療法の可能性を得た(Dent.Jpn.,34,1998)。 (5) リポソームモデル膜とFluorescence Polarization法を用いて細胞膜流動性低下作用を解明し、緑茶カテキン類の作用機序を初めて明らかにした(Pharmacol.,印刷中)。 (6) 植物性薬理活性アルカロイドに関しても、食用植物と生薬中β-カルボリン類の定量的な分析薬理学的検討を行った(Phytochem.Anal.,印刷中;Chem.Pharm.Bull.,印刷中)。 (7) 生活廃棄物のリサイクルとして食物の機能性非食用部分を利用する発想から、タマネギ外皮に抗歯周病活性を見い出し、平成10年度は活性成分の粗精製まで終了した。平成11年度は、歯周病に対する植物化学療法を確立すべくさらに研究を発展させる予定である。
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