研究概要 |
骨代謝に関わる一酸化窒素(NO)の生理作用およびその産生調節機構について検討している途上、マウス頭頂骨由来の骨芽細胞様細胞(MC3T3E1)、ヒト骨肉腫由来の骨芽細胞様細胞(SaOS-2,HOS,MG-63)およびヒト骨芽細胞(Sam-1)において誘導型NO合成酵素(iNOS)およびGTP-シクロヒドロラーゼI(GTP-CH)のmRNAの共発現現象を見い出した。本年度は、iNOSおよびGTP-CHの共発現機構を解明するため、TNF-α,IFN-γおよびIL-1処理時の培養骨芽細胞様細胞におけるこれら遺伝子発現の時間経過、転写因子およびその共発現の生理的意義を検討した。 TNF-α(1ng/ml),IFN-γ(200u/ml)およびIL-1(10u/ml)処理は、MC3T3E1細胞において、iNOSと同様にGTP-CHのmRNA発現を誘導した。両遺伝子発現は同じ時間経過で増加し、サイトカイン刺激の6時間後に最大の発現が認められた。これら遺伝子の発現に伴い、NOおよびBH4量の著しい増加も認められた。GTP-CH活性の阻害剤(DAHP;2,4-diamino-6-hydroxypyrimidine)を用いた薬理学的研究は、BH4がiNOSの酵素活性に係わっているが、iNOSmRNAの誘導には関与していないことを示した。そして、このサイトカインに反応する両遺伝子の発現が、NF-χBの阻害薬(PDTC;pyrrolidine dithiocarbamate)やAP-1の阻害薬(Curcumin)を用いた実験より、NF-χBおよびAP-1を介して生じていることを示した。また、MC3T3E1細胞において、sepiapterinにより細胞内で生合成されたBH4が、NO発生剤(SNAP;S-nitroso-N-acetyl-D,L-penicillamine)により細胞内で化学的に生成されたNOにより惹起されたアポトーシスを抑制することを見いだした。 以上の知見より、現段階において、GTP-CH遺伝子の発現はiNOS遺伝子の発現により生成されるNOのアポトーシスから細胞を保護するために生じていると解釈される。
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