加速過分割照射法(CHART)による耳下腺損傷について、モデル実験系により検討した。耳下腺損傷の検出にあたって、磁気共鳴画像(MRI)装置を用いて、(1)CHARTによるラット耳下腺の、自由水プロトンと高分子結合プロトンとの間の磁化移動の変化(Magnetization Transfer Contrast、MTC)と(2)CHARTによる損傷耳下腺の糖代謝の変化を画像化した。これら(1)、(2)と耳下腺の損傷とを定量的に評価するため、ラット耳下腺にX線照射後、損傷した耳下腺由来の血清アミラーゼ活性、尿中に排泄された層アミラーゼ活性ならびに耳下腺中に残存している総アミラーゼを経時的に測定した。 MTCの検出に用いるパルスシーケンスは、グラディエントエコー法あるいはFISP法が優れていることがわかった。耳下腺の吸収線量が小線量と大線量とでは、尿中総アミラーゼ活性の最大値発現に時期が異なることが明らかになった。このことは、耳下腺腺房細胞の、照射による細胞死の発現の機構が、小線量と大線量とでは、異なることを示唆するものである。 次いで、耳下腺損傷に伴う口内の粘膜炎に付随する疼痛と三叉神経痛とを鑑別するために、MRIを用いて、その結果、三叉神経痛の評価には、CISSシーケンスならびにFISPシーケンスが有効であることが明らかにされた。三叉神経痛の責任血管は、上小脳動脈(SCA)が54例中25例(46.2%)と最も多く、ついで前下小脳動脈(AICA)9例(16.6%)、SCAとAICAのサンドイッチ圧迫が5例(9.2%)とつづいた。MPRの断層方向、すなわち冠状断、矢状断、三叉神経に直交する断面ならびに平行な断面の4方向のいずれも、神経と血管との相対的な位置関係の把握が可能であった。三叉神経第II枝に疼痛が発現している患者は、Root Entry Zoneにおいて、血管が三叉神経神経根の内側を圧排し、三叉神経第III枝に疼痛が発現している患者は神経根の外側が圧排されている傾向にあった。神経根を圧迫する部位に依存して、疼痛の出現する領域(神経支配領域)が異なることが明らかにされた。
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