研究概要 |
RT-PCR法を用いると、耳下腺、顎下腺、舌下腺の三大唾液腺組織から得られたmRNAには、α-amylase(AMY),MUC-7,α-smooth muscle actin(SMA)とも検出された。発現量の比較はRT-PCR法では困難であるが、傾向的にはSMAは同一量の発現で、AMYは耳下腺に多く、MUC-7は顎下腺と舌下腺に多かった。このことは以前より漿液腺はAMYを発現し、逆に粘液腺はMUC-7を発現していると考えられていたが、発現量は異なるもののすべての唾液腺がこれらのmRNAを発現していた。唾液腺腫瘍組織においてAMYは粘表皮腫、polymorphous low-grade adeno Carcinoma(PLAC)で正常より強い発現が認められ、多形性腺腫やclear cell carcinoma(CCC)では弱く発現していなかった。MUC-7は粘表皮腫、PLACで正常唾液腺と同等の発現が認められ、多形性腺腫では弱く発現していたが、CCCでは発現していなかった。SMAはMUC-7と同様の結果であった.培養細胞では正常・腫瘍に関わらずMUC-7の発現は認められなかった。AMYは正常顎下腺細胞で発現しており、HSG,ACCのcell lineでは発現していなかった。培養多形性腺腫細胞、粘表皮腫細胞ではわずかに発現を認めた。SMAは正常顎下腺細胞と粘表皮腫細胞強く発現しており、培養多形性腺腫細胞やHSG,ACCではわずかに認めれられた。これらの結果より、腫瘍の悪性度が強くなるほどAMY,MUC-7,SMAの発現が減弱すると考えられた。また、一部の塩基配列をDye terminator法で見たところ、特に異常は認められなかった。
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