研究概要 |
前年度の研究において,歯周病原性細菌porphyromonas gingivalisの組織定着因子である線毛に対する40クローンのモノクローナル抗体(mAb)を作製した。これらの反応特異性の内訳は,線毛2量体を認識するもの20,3量体を認識するもの11であり,単量体を認識するものは無かった。本年度はまず,2量体を認識するものについて競合阻害実験を行い,その結果から同一あるいは近接するエピトープを認識すると考えられた2クローン,Pfyx205(α,κ)およびPfyx206(γ1,κ)を選択した。次いでこれらのmAbが認識するエピトープ構造の解明を目的として,phage-displayed random peptide libraryを用いてmAbが認識するアミノ酸配列の決定を試みた。Panningを繰り返すことで,mAbに反応性を示す複数のファージクローンが得られたが,対照のmAbとの反応性や種々の競合阻害試験の結果に基づいて,最終的にPfyx206に対する1クローンの特異性を確認することができた。この挿入ペプチドのアミノ酸配列を調べたところQAAQDVWGVHTAGであり,線毛サブユニットの260番目からのアミノ酸配列LAAAQAANWNDAEGと部分的な相同性を認めた。これら2種のペプチドの反応特性をさらに詳細に解析するために,両ペプチドを化学合成した。しかし合成されたペプチドは水溶性が低く,そのままでは抗原抗体反応実験に供し得なかった。現在,水溶性を高めつつ抗原性に影響を与えない化学修飾法等を検討している。また平行して,線毛サブユニットの推定アミノ酸配列から1分子中に3カ所の存在が予想されるシステイン残基の存在様式をタンパク化学的に解析した結果,確かに1分子中3残基のシステインが存在し,うち2つはジスルヒド結合を形成し,残りの1つは還元状態で存在することが明らかになった。
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