18F-2fluoro-2deoxyglucose(FDG)を用いたPET(positron emission tomography)は、悪性化に伴う細胞の糖代謝亢進を画像としてとらえる点で、他の形態的画像診断とは異なる診断法である。今年度我々は、(1)PET象とMR像をコンピューター上で重ね合わせることにより、原発巣とリンパ節の解剖学的局在を明確にする。(2)上記方法によるPET・MR重ね合わせ像の位置的誤差を求める。(3)PETにおいて、転移性リンパ節と誤診されやすい部位(偽陽性部位)を同定し、PETの正診率向上のための条件を検討する、というテーマで研究を進めた。 PETを撮像する際RIマーカーを3点に装着して検査を行いそのデーターとMR/CT画像データーを上記3点で合成した。その合成誤差は、XY軸に対しては5mm以下、Z軸方向でも6mm以下という成績が得られ、本方法の臨床的有用性がわかった。 画像合成方法の確立により、本年度は12例についてどのような部位にFDGの生理的集積があるのか検討できた。その結果、抜歯窩、口蓋扁桃、顎舌筋、頸動脈、上顎洞粘膜、頸椎に集積が認めれらることがわかった。口蓋扁桃での発現頻度は、高くて7例で発現し、読影には特に注意が必要であることがわかった。6ヶ月前の抜歯窩に集積する例を1例経験した。この抜歯窩への集積度合いは非常に高く、転移性リンパ節以上の集積度合いを示すことがわかった。特に舌癌の症例では、腫瘍部に歯が接触しないように術前抜歯をするケースが多く、腫瘍部と抜歯窩部分との区別が非常に難しいことがわかった。 他のFDG集積部位、顎舌筋や頸動脈、上顎洞粘膜、頸椎では、FDGが集積する頻度は少ないこと、また集積度合いが腫瘍部よりも低いことがわかり、大きな誤診の原因にはなりにくいことがわかった。
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