研究概要 |
我々は,養子免疫療法の改良にあたり,NK細胞の活性化メカニズムをCD2分子を介したシグナル伝達の面より解析した.A)CD2分子架橋刺激による細胞内顆粒放出能について検討:CD2抗体濃度依存性に細胞内顆粒放出の増強を認めた.この効果は,抗CD16抗体にても同様に認められたが,コントロールIgGや,抗LFA-1,CD28抗体では認められなかった.また,チロシンキナーゼ阻害剤であるHerbimycinとPI3キナーゼ阻害剤であるWortmanninは,この効果を完全に抑制した.B)CD2架橋刺激による,NK細胞内蛋白のチロシンリン酸化:CD2,およびCD16架橋刺激により,数種のチロシンリン酸化蛋白が出現した.さらに,免疫沈降Sykのチロシンリン酸化とin vitro kinase assayによる検討により,CD2,およびCD16架橋刺激によりSykの活性化が起こっていることを確認した. C)CD2架橋刺激によるPI3-キナーゼの活性化:PI3-キナーゼは,p85 subnitのSH2domainを介して細胞内チロシンリン酸化蛋白に結合し活性増強を受けることが知られている.そこで,CD2架橋刺激後に,チロシンリン酸化蛋白を免疫沈降し,これに結合するPI3-キナーゼをimmuno blott法により検出したところ,CD2,およびCD16架橋刺激により,チロシンリン酸化蛋白に結合したPI3-キナーゼが増加していた.さらにこの免疫沈降物のPI3-キナーゼ活性も増強していた.D)細胞内アダプター蛋白Shcのチロシンリン酸化とPI3-キナーゼとの結合:Shcは,CD2およびCD16架橋刺激により著明にチロシンリン酸化を受けていた.しかも,チロシンリン酸化Shcに結合したPI3-キナーゼ活性も有意に増強していた.以上の結果より,NK活性化レセプターであるCD2分子は,チロシンキナーゼSykとPI3-キナーゼの活性化を介して,細胞内顆粒放出を引き起こしていることが明らかとなった.今後,さらなる下流のシグナル経路の解析とそのregulationについて検討を加えていく.
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