歯根膜細胞をin vitroで培養・増殖させ、これをin vivoに移植することが歯周組織再生に有効であることを示してきたが、培養・移植した歯根膜細胞が歯周組織を再生しているのか、周囲の細胞にシグナルを与え誘導分化させているのか不明であった。そこで、培養した細胞を標識してから移植することにより、培養細胞のin vivoでの動態を検討した。近親交配ウイスター系ラットを用い、上下前歯を採取して歯根膜細胞を培養、増殖させ、象牙質片に培養歯根膜細胞を播種、さらにBrdU0.1%を添加したMEMで培養して移植した。移植部位はラットの頭蓋骨上とし、被験面を骨面側にして静置、Gore-Tex膜で被覆して弁を縫合した。観察期間を移植後7、14、21、28日とし、標本を作成して観察を行った。その結果、培養細胞を付着させていない象牙質のみの移植では、14日以後の標本では骨性癒着が多発したのに対し、培養細胞を付着させて移植した場合は、骨性癒着がなく、象牙質上にセメント質様の硬組織新生が見られ、培養歯根膜細胞移植による歯周組織再生の有効性が認められた。さらにBrdUの免疫染色、ALP染色、TRAP染色により、培養・移植した細胞の動態を観察した結果、象牙質表面の根吸収が一層生じてからセメント質様硬組織の形成が開始され、歯周組織の発生やGTRなどの再生時に見られるのと同様の過程が観察された。また、移植後28日の標本で、新生されたセメント質様硬組織の上にBrdU陽性の細胞が確認できたことから、培養・移植した細胞が少なくとも28日間は生体内で生存し、セメント質様硬組織の新生に強く関与しているだけでなく、骨性癒着の抑止の役割を果たしていると考えられた。
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