研究概要 |
健常者由来培養歯肉線維芽細胞を用いて、各種サイトカイン(IL-4,IL-13,IFN-gamma,TNFalpha)のプロテオグリカン産生への影響を検討した。プロテオグリカン産生を^3H-glucosamineおよび^<35>S-sulfateの2重標識法を用いて培養上清および細胞画分において測定した。IL-4とIL-13はそれぞれ総プロテオグリカン産生を有意に増加したが、IFN-gammaは減少させた。TNFalphaは培養上清中では増加させたが、細胞画分では減少させた。IL-4とTNFalphaを同時に添加すると培養上清中では相乗的に、細胞画分ではわずかに増加させた。3H-glucosamineおよび35S-sulfateで標識したプロテオグリカン産生を培養上清および細胞画分で測定し、その生化学的性状を調べた。IL-13とTNFalphaを添加した場合には、IL-4とTNFalphaの場合と同様な結果が得られた。IFN-gammaとTNFalphaでは、培養上清中では増加するものの、細胞画分では減少した。歯肉線維芽細胞産生プロテオグリカンを精製し、酵素あるいはアルカリ処理し、生化学的性状を調べたところ、分子量や構成糖鎖から、pearlcan/versican(PG1)とdecorin/biglycan(PG2)の2つのグループに分けられた。IL-4添加により、PG1/PG2比が変化し、PG1が相対的に増加した。またコンドロイチン硫酸プロテオグリカンとヘパラン硫酸プロテオグリカンの比も変化した。さらにTNFalpha添加によりbiglycan分子の側鎖が変化し、二本糖鎖を有する分子が増加した。以上のことより、IL-4,IL-13,IFN-gamma,TNFalphaは歯肉線維芽細胞のプロテオグリカン産生を調節している可能性が示唆された。皮膚科領域では、IL-4のdecorin産生調節とfibrosisを関連させる報告がある。またヘパラン硫酸プロテオグリカンはサイトカインと結合し、その作用調節に関与していると考えられている。ニフェジピンによる歯肉増殖部位でのプロテオグリカン産生増加とサイトカインとの関わりは未だ不明であり、さらに検討をすすめる必要がある。
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